劇団ひとりとキンコン西野、『ゴッドタン』で前髪をありえないほど切る! 2人が空気を読み続けたから着地した最高の結果だ!

 空気を読んでばかりいる芸人を非難する論説が目立つようになってきた。昨年、脳科学者の茂木健一郎が「日本のお笑い芸人たちは、上下関係や空気を読んだ笑いに終止」とツイートし、物議を醸したのは記憶に新しい。

 言うまでもなく、お笑い芸人は空気を読む力に長けている。空気を読める人材がテレビ界で重宝されるのは事実だし、現在のバラエティー番組は“空気の読み合い”みたいなところもある。

 この能力は、果たして日本のバラエティーの発展を阻んでいるのだろうか。序列を崩さず、下克上を決して起こさない。そんな弊害ばかりを引き起こしてしまっている?

 

■「服の破き合い」があるからこそ、空気を読んで一張羅を用意するひとりと西野

 1月13日放送『ゴッドタン』(テレビ東京系)が、すごかった。この日は、「劇団ひとり VS キングコング・西野亮廣」による因縁対決が行われているのだが、その内容はアナーキーの極み。それでいて今回の秀逸な着地点は、この2人が「空気を読んでいた」からこそ引き起こされていたのだから面白い。

 両者の因縁対決となると、お互いが力づくで相手の衣服をビリビリに破るところから始まるのが恒例だが、恒例を恒例のままで終わらせていても仕方がない。どこかで、前回よりバージョンアップを図る必要がある。

 それは両者、承知の上だった。決して、お互いが話し合って作戦を練ったわけではないはずだ。しかし、ひとりも西野も収録へ臨むにあたり、意味もなく一張羅を着てきたという事実が芸人魂を感じさせる。

 西野は羽織っているデニムのロングコートを指し「ゴッドタンのギャラ、これより安いからね!」と告白。要するに、この企画へ出るたびに西野は赤字を被っているということになる。

 一方のひとりは、自身が着てきたパーカーを指し「俺のだってバーバリーのブラックレーベルだからね。めちゃめちゃ着てるやつだよ!」と豪語。日本から撤退したブランドで、しかもヘビーローテションしている愛用服をあえて着用してきた。

 そして、対決のゴングが鳴った。案の定、両者の一張羅はビリビリになり、ひとりも西野も、あっという間で半裸に……。

 このシステムが、非常に面白い。ただの「服の破き合い」だったはずなのに、いい服を着てくることで「なぜ、そんなことをするんだ?」と無駄なモチベーションを笑う要素がプラスされる。しかも、それを両者とも暗黙のうちに行っているという事実。安全策をとってボロい服を着てこないのは、2人が空気を読んだからである。

■嫌なのに前髪を切ったのは、2人がバラエティー的な空気を読んだから

 今回はボードに9つの対決案(「相手を泣かせる対決」「陰毛抜き対決」など)が提示され、その中のどの案で勝負するか、2人がランダムで選ぶという方式がとられた。

 ここで、ひとりがいの一番で指したのは「自分の髪をどれだけ切れるか対決」だ。「相手を見ないで、自分の髪をより多くハサミで切れた方が勝ち」というルールである。

 自信満々でこの対決を指定したひとりに対し、嫌がる西野。当然だ。しかし「じゃあ、お前の負けでいいな?」と追撃するひとりの挑発が、西野のハートに火を点けた。「言っても、根は芸人ですから」と西野は宣戦布告し、遂に台本上では選ばれる予定じゃなかったハサミ対決が決行される流れになってしまった。

 しかし、本音は2人ともやりたくないのだ。ひとりには出演しているCMが数本あり、イメージチェンジするには各所への許可が必要になってくる。“アーティスト”という側面を持つ西野にとっても、意味なく唐突に髪型を変える愚行を躊躇するのは当然だ。

 しかし、もう引けない。すでに、面白そうな流れになってしまっている。空気を読んで、ひとりと西野はこのチキンレースに挑んだ。

 対決直前の2人のやり取りが、芸人の悲しき性をストレートに表している。

ひとり お前さ、本当、ここのひと笑いのために無茶すんなよ?

西野 わかってんだよ。やりたくねえんだ、こっちも。でも、もうわかんなくなっちゃってんの。どっちに行ったらいいか。

 そして、対決直前。司会のおぎやはぎ・矢作兼は「この場のノリでやっていいもんじゃない」「今だったらギリやめれる」と2人に確認するのだが、もう止められる空気じゃなかった。嫌がりながらも「やるよ!」と歯を食いしばり、両者は自身の前髪を鷲掴み。そして、ジョキジョキと勢い良く自身の髪にハサミを入れた。

 床に落ちる髪の毛の量が、2人とも尋常じゃない。見ると、ひとりも西野も取り返しのつかない髪型になってしまっている。そして、「なんでやるんだよ!」と相手を責め合う2人。

 しかもだ。両者の勇気は甲乙付け難く、判定はドローという結果に終わった……。

 いかがだろうか。これは、ひとりと西野が「番組」「流れ」「芸人としての見え方」などいろいろなことを意識し、空気を読んだからこそ着地した秀逸な結果である。

 この2人の意気が評価されないわけない。『水曜日のダウンタウン』『クイズ☆正解は一年後』などを担当するTBSプロデューサー・藤井健太郎は1月16日にTwitterで番組の感想を発信、以下のように思いを綴っている。

「ゴッドタンの『劇団ひとりvsキングコング西野』最高でしたね。正解は一年後の有吉チーム楽屋で『これくらい髪型変わる時ってホントは事前にスポンサーに言わなきゃいけないんだって…』と仰ってました」

 空気を読んだからこそ逃げ場が失われ、結果として最高の着地点にたどり着いた2人。年末年始の番組、唐突に不可解なヘアチェンジを施して現れた劇団ひとりの角刈りスタイルを思い出すと、あまりのカッコ良さに震えがくる。
(文=寺西ジャジューカ)


Source: 日刊サイゾー

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